オフシーズンになると選手の移籍の話題が溢れてきます。なかでもFA権を行使した選手が移籍した際、「人的補償」問う言葉を目にした人も多いはず。この記事では人的補償について、またプロテクトについて詳しく解説していきます!この記事を読んだ後には少しは人的補償やプロテクトについてわかります!
人的補償とは?
人的補償とは「FA権を行使して選手が移籍した際に、移籍前の球団側が移籍先の球団から選手を1名指名し獲得できる補償制度」です。
FA権とはフリーエージェント権利のことで、選手が他球団と自由に交渉・契約できることです。FA権には国内FAと海外FAにわかれています。詳しくは下記記事で詳しく解説していますので、わからない方はまずはこちらをご覧ください!
人的補償が必要な理由
人的補償が必要な理由は一方的な戦力低下を防ぐためです。
FA権を取得する条件の中に一軍登録されていることが前提となります。取得するための年数も長いため、主力選手である可能性は十分にあります。
その中でFA権を行使して他球団に移籍してしまうと、チームにとっては大きな戦力ダウンになる可能性が高いです。同時にチーム同士の戦力差が広がりすぎてしまうと、プロ野球の運営にも決して良いことではありません。
そういったことを防ぐために人的補償の制度が定められています。ただしFA権を行使した選手全員に適用されるわけではなく、旧年俸によるランク付けが行われます。
年俸ランクとは
年俸ランクとは前所属球団での旧年俸準に3つのランク付けがされます。
ランク | 旧年俸順位 |
---|---|
Aランク | 1~3位 |
Bランク | 4~10位 |
Cランク | 11位以下 |
Aランク・Bランクの選手には人的補償が必要となり、Cランクの選手の場合は人的補償は必要ありません。人的補償の人数はAランク・Bランクともに1人となります。
人的補償とトレードの違い
選手が移動するという意味ではトレードと混在してしまう方もいるかもしれません。トレードと人的補償の違いは、簡単にまとめると下記の通りとなります。
項目 | 人的補償 | トレード |
---|---|---|
目的 | 譲渡する選手の年俸や実績、ポジションなどを考慮して、人的補償の金額や選手のレベルを決める | 両球団が合意すれば、年俸や実績、ポジションなどを問わず、自由に選手を交換する |
金額 | 譲渡した選手の年俸の2倍以内 | 原則として行われない |
金銭のやり取り | 原則として行われない | 行われない |
簡単に言うと・・・両球団合意の上ならどんな選手でも交換できるのがトレード、ある程度制約のある中で選手間の移動があるのが人的補償かな・・・
人的補償のルールとは?
人的補償の大まかな概要がわかったところでここからはルールについて解説します。
人的補償は誰でも獲得できる!というわけではありません。いかの条件に該当する選手は人的補償で獲得することはできません。
- FA選手の移籍する先の球団がプロテクトした28人の選手
- 外国人枠が適用外になった外国人選手(長年日本で活躍してくれた外国人選手)
- 直近のドラフトで獲得した新人選手
- 育成契約選手
急に出てきたプロテクトってなんだ・・・
プロテクトとは?
プロテクトとは保護するという意味から、FAで選手が移籍する先の球団が、人的補償の対象とならないようにリストを作成することです。
リストには28人の選手と選定することができますが、一軍登録が29人なので、決して余裕のある人数ではありません。現在活躍中の選手はもちろん、今まで支えてきてくれたベテラン選手、これから期待する選手を考えるとあっという間に28人は埋まってしまうと思います。
人的補償で好きな球団から選手が移籍が決定した時にSNS等でファンの意見が活発になるのはこういったところから出てくるのかと思います。
推しの選手が人的補償されたら、なんでプロテクトしなかったの!ってなるのは当然ですよね・・・
2球団に人的補償を求められた場合
あまりないケースかもしれませんが、FA権を行使した選手を2球団から獲得し、かつ人的補償の該当となった場合、プロテクトリストはそれぞれ異なったものを作成できます。
球団によっては投手がなんとしてでも欲しい、内野手の補強がしたい球団など様々です。相手球団が欲しい選手のポジションに合わせてプロテクトしていくことが戦略の1つとなります。
ヤクルトは投手が欲しいです!!!
人的補償に指名された選手が移籍を拒否したら?
人的補償に指名された選手が仮に移籍を拒否した場合、「資格停止選手」となります。解除されない限り、試合出場が出来なくなります。引退もできないので、実質拒否権はないということなります。
時々感じるプロの世界の厳しさはこういうところにもあります・・・
過去の人的補償選手一覧
さいごに過去の人的補償選手一覧を紹介します。過去にこれだけの選手が人的補償として移籍しております。特に世間的に話題の大きかったのは、2006年の工藤投手の時でしょうか。当時43歳ではりましたが、通算215勝もしている選手です。ファンの中では「なんでプロテクトしてなかったんだ!」を波乱が起きました。
年 | 人的補償選手 | FA移籍選手 | 人的補償選手移籍先 |
---|---|---|---|
1995 | 川辺忠義 | 河野博文 | 巨人→日本ハム |
2001 | 平松一宏 | 前田幸長 | 巨人→中日 |
2001 | ユウキ | 加藤伸一 | 近鉄→オリックス |
2005 | 小田幸平 | 野口茂樹 | 巨人→中日 |
2005 | 江藤智 | 豊田清 | 巨人→西武 |
2006 | 吉武真太郎 | 小久保裕紀 | ソフトバンク→巨人 |
2006 | 工藤公康 | 門倉健 | 巨人→横浜 |
2007 | 赤松真人 | 新井貴浩 | 阪神→広島 |
2007 | 岡本真也 | 和田一浩 | 中日→西武 |
2007 | 福地寿樹 | 石井一久 | 西武→ヤクルト |
2010 | 高濱卓也 | 小林宏之 | 阪神→ロッテ |
2011 | 藤井秀悟 | 村田修一 | 巨人→横浜 |
2011 | 高口隆行 | サブロー | ロッテ→巨人 |
2012 | 高宮和也 | 平野恵一 | オリックス→阪神 |
2012 | 馬原孝浩 | 寺原隼人 | ソフトバンク→ オリックス |
2013 | 鶴岡一成 | 久保康友 | 横浜→阪神 |
2013 | 一岡竜司 | 大竹寛 | 巨人→広島 |
2013 | 脇谷亮太 | 片岡治大 | 巨人→西武 |
2013 | 藤岡好明 | 鶴岡慎也 | ソフトバンク→ 日本ハム |
2013 | 中郷大樹 | 涌井秀章 | ロッテ→西武 |
2014 | 奥村展征 | 相川亮二 | 巨人→ヤクルト |
2016 | 金田和之 | 糸井嘉男 | 阪神→オリックス |
2016 | 平良拳太郎 | 山口俊 | 巨人→横浜DeNA |
2017 | 高木勇人 | 野上亮磨 | 巨人→西武 |
2017 | 尾仲祐哉 | 大和 | 横浜DeNA→阪神 |
2018 | 内海哲也 | 炭谷銀仁朗 | 巨人→西武 |
2018 | 竹安大知 | 西勇輝 | 阪神→オリックス |
2019 | 長野久義 | 丸佳浩 | 巨人→広島 |
2019 | 酒居知史 | 美馬学 | ロッテ→楽天 |
2019 | 小野郁 | 鈴木大地 | 楽天→ロッテ |
2020 | 田中俊太 | 梶谷隆幸 | 巨人→横浜DeNA |
2021 | 岩嵜翔 | 又吉克樹 | ソフトバンク→中日 |
2022 | 張奕 | 森友哉 | オリックス→西武 |
2022 | 田中正義 | 近藤健介 | ソフトバンク→日本ハム |
2023 | 甲斐野央 | 山川穂高 | ソフトバンク→西武 |
こうやってみると巨人は主力となるFA選手多く獲得しているな・・・と同時にヤクルトは人的補償となるFA選手は獲得していないですね!
さいごに
人的補償とプロテクトについてわかりましたでしょうか?2023年もFAのニュースはたくさんありましたが、人的補償については、今のところ大きな話題は起きておりません。来シーズンはもしかすると、大活躍中の選手がFA権を行使して他の球団に移籍することで、人的補償が騒がれるかもしれないので知っておいて損はないでしょう。
このブログでは野球観戦を始め、様々なコンテンツを検討・作成しています。こういうこと知りたい!などのものがありましたら、お気軽にお問合せください!野球の基礎知識を増やして、野球観戦を存分に楽しみましょう!